HAIVISION(AVIWEST)の中継システム機材
公開日:2018/08/13最終更新日:2023/11/22
※2023年11月追記:2023年11月現在AVIWEST製品はHAIVISIONブランドの製品となっております。
AVIWEST
AVIWESTはフランスのサン=グレゴワールというところに本社を構えるメーカーです。
世界120カ国以上の販売店や流通ネットワークを通じて世界中の放送局をサポートしています。
AVIWESTはスウェーデンの通信機器メーカーであるエリクソンやカナダのグラスバレー等にいたエンジニアが集まり、2008年9月に設立されたメーカーです。
日本での知名度はまだそこまで高くありませんが世界では名前が知られており、近年ではサッカーワールドカップや英国のロイヤルウエディングの中継でも使われた実績を持つメーカーです。
フランスのサン=グレゴワール
AVIWESTは、DMNG(Digital Mobile News Gathering=デジタル モバイル ニュース ギャザリング)と呼ばれるシステムを開発し、このシステムは、現在80カ国以上の主要放送局が最新ニュースやライブイベントのライブ中継するために使用されています。
DMNGシステムの仕組み
AVIWESTの中継システムであるDMNGシステムは大きく分けると2種類に分類されます。
- 送信機(エンコーダ、トランスミッタとも呼ばれます)
- 受信機(デコーダ、レシーバとも呼ばれます)
これらを最小構成とし、インターネット回線(SIMカード、ブロードバンド等)を使用することで、ライブ中継ができるようになります。
おおまかな仕組みとしては下記のようになります。
- カメラからの映像はHD/SD-SDIもしくはHDMIで「送信機」に入力されます。
- 「送信機」では入力された信号をエンコード(H.264 またはH.265)してデータ量を小さくします。
- 「送信機」は接続された回線(主に現在は複数の4G-LTE回線やWi-fi)からインターネット経由でデータを「受信機」に伝送します。
- 「受信機」では受信したデータをデコードし、SDIもしくはHDMIとして出力します。
さらにこれに様々な種類のオプションを適用することで、様々な運用方法を行う事が可能です。
上記図はAVIWEST オフィシャルホームページより引用
上記概要図で「CAPTURE」は送信機、「TRANSMIT」は伝送経路、「RECEIVE」は受信機、「DISTRIBUTE」は受信した映像の出力となっています。
各製品の特徴
送信機(エンコーダ、トランスミッタ)
HAIVISION(AVIWEST)の送信機には下記のような種類があります。
- PRO3シリーズ
- AIRシリーズ
- PRO1シリーズ
- HE4000
- MOJOPRO/APPシリーズ
- etc
たくさんありますが、頑張って順番に紹介していきます。
PRO3シリーズ/モバイルエンコーダー(NAB2018でThe Best of The show受賞)
2018年度発売予定の新シリーズであり、H.265/HEVCに対応している今後のAVIWESTのフラッグシップとなるシリーズです。こちらの送信機はハードウェアエンコーダを採用しています。このハードウェアはエンコーダで有名な某社でも使用されており、信頼性は高いといえます。
筐体は後述するPRO1シリーズを引き継いでおり、Vマウントでカメラに取り付けることができます。また、カメラマウントとは反対側にもVマウントプレートが付いておりこちらにVマウントバッテリーを装着することができます。重さは約1.2kgですので比較的軽いです。
主要な機能としては、中継・収録・転送です。また中継しながらの収録もできるので、電波状況が悪い現場でライブ中継にて現場の雰囲気を伝えると同時に高画質で収録し、終了後にその高画質ファイルを転送し素材として使用することもできます。
SIMカードを8枚挿入することができ、Wi-fiも使用可能です。さらにRJ-45は2口あるため有線接続も可能です。(携帯回線と有線を同時使用することは少ないと思いますが…)
SIMカードが8枚挿入タイプがPRO380、4枚挿入タイプがPRO340という名称です。
このRJ-45にはもう一つの使用用途があり、それは衛星通信端末を使用できることです。
BGANやGXの衛星回線を使用することで携帯回線が使えない地域や大規模災害による携帯電話中継局の倒壊時にもライブ中継をすることができます。
以前、BGANの端末をレンタルして実際にテストしてみたことがあります。帯域が最大0.5~0.6Mbps程度なので、実際の映像は正直ザラついていましたが、大規模災害等で携帯電話が使えないような現場でも、雰囲気を伝えることが点では大きなメリットになるかと思いました。
また、RJ-45が2口あるためそれぞれに衛星端末を接続し2倍の1Mbpsで伝送することもできます。1Mbpsであれば、災害時としては充分な画質ではないでしょうか。
また、「QUAD」という延長アンテナを2つ取り付けることができます。「QUAD」については後述します。
AIRシリーズ/モバイルトランスミッター
こちらも2018年度販売予定である、完全新設計のシリーズとなります。
こちらはコンパクトな筐体にH.265/HEVCのハードウェアエンコーダを搭載しています。
また、内蔵バッテリーを搭載しており、よりコンパクトでより安定したライブ中継をすることができます。
InterBEE2017にてテクノハウスはAIR機のデモ機を展示し多くのお問い合わせを頂き、注目度の高さを実感しました。
このAIRシリーズに関しては、今後新たな機能が追加されるようです。
AIRシリーズはAIR3とAIR2があり、AIR3がH.265/HEVC、AIR2がH.264/AVC対応となっています。
HE4000/UHDエンコーダ
据え置き型でハーフラックサイズのコンパクトなUHD/12G対応エンコーダです。
こちらもPRO3、AIRシリーズと同様にH.265/HEVCのハードウェアエンコーダを搭載し、12G-SDI、4x3G-SDI、4xHD-SDIが入力できます。
基本的にはベニュー(イベント会場)等での使用が主であり、最大4つのHDを入力できる点は、12G-SDIでなくても現在の使用環境にかなっているのではないでしょうか。
MOJOPRO/ライブ中継アプリケーション
こちらは今までの上記ハードウェアタイプの製品と異なり、スマートフォンのアプリです。
お使いのスマートフォンがカメラ・エンコーダ・トランスミッタの1台3役となります。
受信機のオプションのMOJOPRO用入力ライセンスの分だけ同時接続ができます。(例えばMOJOPRO入力ライセンスが3つある受信機は、同時に3台までのMOJOPROやAPPが接続できます)
今、AVIWESTが強くプッシュしている製品の一つです。
特徴は下記の5つです。
- あらかじめアプリの設定しておくことで、起動後すぐにライブ中継をすることができます。つまりスマホを持っていれば中継を開始することができるため機動性に優れます。
- 収録、転送をすることができますので電波が悪くライブ中継できない場所でも収録し、電波が回復したところで転送できます。
- インターフェイスにオーディオメータや時間、バッテリー等の表示が追加されライブ中継中に収録もできます。
- Managerというサーバーを別途用意すれば、受信機との間でインカムが使用できます。
- 保存されているビデオの編集(動画のクリップ、つなぎ、音声の追加、ロゴの挿入)等もできます。
これらのアプリの最大の特徴は”アプリが無料でダウンロードできること”です。
皆さんが常に持ち歩くスマートフォンがカメラとなることで、いつ何が起きても即時ライブ中継を開始することができます。これが最大のメリットです。デメリットとしては、スマートフォンのカメラであるため、通常のカメラよりも画質が落ちること、回線が基本的に使用している回線1本であるため、画質が安定しにくいことです。ただ、ボンディングし2回線として使用できますので、Wi-fiやテザリングにより電波、帯域の安定性を向上することができます。
APP/モバイル中継アプリケーション
あらかじめ設定しておくことで、起動後すぐにライブ中継をすることができます。持っていれば中継を開始することができるため機動性に優れます。また、収録、転送をすることができますので電波が悪くライブ中継できない場所でも収録し、電波が回復したところで転送できます。MOJOの簡易版という立ち位置です。
PRO1シリーズ
PRO1シリーズ前面
PRO1シリーズ背面写真
現在のフラッグシップモデルであり、H.264/AVCに対応しています。
基本的な機能はPRO3シリーズと同等です。世界中で多くの放送局で使用されており、USBモデム接続タイプ(PRO110)、SIMカード挿入タイプ(PRO180、PRO140)があります。また、RACKシリーズという中継車用のものもあります。
アクセサリ
QUAD
写真はAVIWEST公式HPより
外付けの拡張アンテナです。
底面に磁石パッド、三脚マウントネジ穴が付いているため、例えば自動車で走る際にPRO3シリーズはもちろん自動車の中に、「QUAD」は自動車のルーフトップに取り付けてより安定してライブ中継をすることが可能となります。ちなみにバイクでもタンクに「QUAD」を取り付け、二人乗りで後ろのカメラマンが中継するという方法で使われてたりもします。フランスの警察、軍にも導入しており、フランス軍の装甲車の外面に「QUAD」が取り付けられている場面もありました。
受信機(デコーダ、レシーバ)
受信機はシンプルに1種類のみですがバリエーションが豊富です。
こちらも機能がたくさんありますので、頑張って紹介していきます。
ストリームハブ(StreamHub)/多目的トランシーバープラットフォーム
1RUのサーバータイプです。
まず筐体として大きく3種に分かれます。
- ストリームハブ ライト(StreamHub Lite) :1x SDI出力
- ストリームハブ スタンダード(StreamHub Standard) :4x SDI出力、マルチビューアーオプション追加可能
- ストリームハブ ウルトラ(StreamHub Ultra) :1x 12G-SDI出力、マルチビューアーオプション追加可能
以前まではオプションの入力ライセンスを1~16まで追加していく形態でしたが、今回からMOJOPRO/APPを除く全ての送信機との接続が可能なライセンスが最初から16個入ることになりました。ですので、新たに送信機を追加しても入力ライセンスは追加購入の必要はなくなりました。
MOJOPRO/APPを使用する場合は別途MOJOPRO入力ライセンスが必要となります。
ストリームハブにはたくさんのオプションがあります。これらのオプションを組み合わせることでお客様に最適な構成を提案できます。
ここからはたくさんのオプションを説明していきます。
オプション1:MOJOPRO入力ライセンス
送信機のところで紹介したMOJOPROやAPPを使用できるオプションです。このオプションの分だけ、スマートフォンにインストールしたMOJOPROやAPPから接続できます。1つあると、インストールしてあるスマートフォンからすぐにライブ中継ができますのでとても便利です。海外ではリポーター1人で中継をすることも結構あるようです。
オプション2:IP入力ライセンス(サードパーティ)
ストリームハブがストリームハブたる所以のオプションです。
RTSP, HLS, RTMP, TS over IPのプロトコルに対応した入力ライセンスです。まだ、細かくは試せていませんが少なくともRTMPで入力はできました。
オプション3:IP出力ライセンス
ストリームハブからRTSP, HLS, RTMP, TS over IP, SafeStreams(AVIWEST専用)のプロトコルで出力することができます。最大16出力まで追加することができます。
このIP出力ライセンスと「オプション2:IP入力ライセンス(サードパーティ)」を組み合わせることでストリームハブから別のストリームハブへ映像を伝送することができます。
オプション4:マルチビューアー機能
送信機より入力された映像を2×2から最大4×4までマルチビューイングすることができます。
ストリームハブスタンダード、ウルトラに対応しています。
オプション5:インカム機能
送信機と受信機にて双方向の音声コミュニケーションをとることができます。
(PRO3シリーズ、AIRシリーズ、HE4000およびAPPを除く)
オプション6:レコーディング機能
送信機から送られてきた映像をストリームハブで収録します。各入力毎に収録することができます。
例えば4台の送信機と接続されている場合、4台同時に収録することができます。
オプション7:プレイバック機能
送信機で収録した映像ファイル、もしくは「オプション6:レコーディング機能」で収録した映像をSDI出力することができます。
オプション8:AES暗号化オプション
256bitでAES暗号化をするオプションです。
さいごに
AVIWESTの製品は、送信機は複数の種類があり、受信機は1種類のみという構成で展開されています。
ただ、受信機に関してはオプションを組み合わせることで、ただのライブ中継だけでなく様々な使い方ができる可能性を持つ製品です。
テスト機が入り次第デモができますので是非ご連絡いただければと思います。