グローバルシャッターとローリングシャッターの違い
公開日:2019/07/08最終更新日:2022/07/20
IO Industries の4Kカメラのセールスポイントに「グローバルシャッター採用」という要素があります。
今回は「グローバルシャッター」と比較されることの多い「ローリングシャッター」との違いについて、おさらいしてみましょう。
CCDからCMOSへ
映像撮影テクノロジーの要素として、イメージングセンサーは長い間CCDが使われていました。CMOSイメージセンサーは1990年代から実用化され、製造ラインに汎用の半導体製造装置を流用できるためCCDに比べてコストダウンが図れるため、2000年以降、携帯電話や小型ビデオカメラ、デジタルスチルカメラの分野で使われるようになり、品質向上とともに業務用カメラの分野でも採用されてきました。
CCDイメージングセンサーからCMOSイメージングセンサーに移行するに従い、多くの面で改善をもたらしましたが、一方で明らかな副作用の一つが「ローリングシャッターアーティファクト」の存在です。(後述の写真参照)
ローリングシャッターの存在はCMOSセンサーに限ったものではありません。また、すべてのCMOSセンサー採用カメラがローリングシャッターを備えている訳でもありません。 デジタルシネマ業界で使われている多くのカメラは、グローバルシャッターを備えたCMOSセンサーを使用しています。しかしCMOSセンサー全体で見ると大半はローリングシャッターを使用しています。
「ローリングシャッター」「グローバルシャッター」は、イメージセンサーが画像をスキャンする方法を指す技術用語です。
センサーがローリングシャッターを採用している場合、これはセンサーの四角の一辺(通常は上)から、もう一辺へとラインごとに画像を順次スキャンすることを意味します。
グローバルシャッターを採用しているセンサーは画像の全領域を同時にスキャンします。
- ローリングシャッター→センサーの四角の一辺(通常は上)から、もう一辺へとラインごとに画像を順次スキャン
- グローバルシャッター→画像の全領域を同時にスキャン
多くのCCDセンサーは、グローバルシャッタースキャンを採用していました。そのため、現代のカメラにおけるCMOSセンサーの普及は、昨今のビデオや映画におけるローリングシャッターアーティファクトの増加の原因となっています。(アーティファクト=意図せずに人工のものが現れてしまうこと)
(左)ローリングシャッターがフレームの上から下にスキャンする方法のイメージ(右)グローバルシャッターが一斉に撮像するイメージ
アーティファクト-歪み-
ローリングシャッターがもたらすアーティファクトは、一般的に、カメラの動き、フレーム内を素早く動く被写体、不安定なハンドヘルドカメラのぶれ、回転など、動きの多いシーンに現れます。フレームを通り抜ける車はそれらがまっすぐであるべきところで斜めの形にレンダリングされます。たとえば、長方形の大型バスは、平行四辺形に映ります。フレーム内のオブジェクトが回転した場合は、回転体がお互いにねじ曲がって、複雑なパターンを作り出します。飛行機のプロペラを映した映像などで、変形を経験された方もいるかと思います。問題の被写体やカメラの動きが速ければ速いほど、アーティファクトは誇張されます。
アーティファクト-フラッシュバンド-
もう一つの代表的なアーティファクトとして、フラッシュバンドがあります。フレームレートより早い発光照明、例えばスチルカメラのフラッシュを炊いた被写体などの場合、順次スキャンではフレームの上下でタイミングの違いが出てしまうため、フラッシュの発光が上下に分割されて2フレームに分かれて撮像してしまうことがあります。センサー受光が全領域同時で読み込みスピードの早いグローバルシャッターは、この現象が原理的に発生しません。
フラッシュバンドの状態
すべてのローリングシャッターCMOSセンサーが同じように作られているわけではありません。ローリングシャッターアーティファクトは、その設計により発生状況は様々です。一般的に、センサー解像度が大きくなるにつれて、ローリングシャッターアーティファクトの可能性が高くなります。これは、センサーの面積が大きいほど、そのセンサーの上から下までの読み取りに時間がかかるためです。フルフレームセンサーを搭載したデジタル一眼レフは、カメラの動きや被写体の動きに対して、アーティファクトを多く生みました。一方で一部のデジタルシネマ用カメラの中には、見事に解決した製品もあり、最も過酷な状況以外ではローリングシャッターアーティファクトを見つけられません 。
ローリングシャッターセンサーはコストパフォーマンスに優れている
一般的に言えば、2つの同等のセンサーで厳密にパフォーマンスを比較する場合、グローバルシャッターとローリングシャッターを比較すると、ローリングシャッターセンサーは発熱が少なく、SN比が良好で、ダイナミックレンジが広いことがわかります。もちろんグローバルシャッターセンサーに多くの開発技術を投入することでこれらの側面を補うことができますが、開発および製造するためのコストは高くなります。よって、ローリングシャッターセンサーはコストパフォーマンスに優れたカメラと言えます。
グローバルシャッターセンサーは本質的にローリングシャッターアーティファクトの可能性が無いのでその点については有利です。
一方でコストパフォーマンスに優れたローリングシャッターセンサーは、その特性をよく理解してケアすることでアーティファクトを軽減できます。
回転する被写体に対してのシャッタースピードの選択、カメラのぶれを防ぐスタビライザーの運用などです。
参考引用 https://www.bhphotovideo.com/explora/video/tips-and-solutions/rolling-shutter-versus-global-shutter
テクノハウス製品ページ
- Victorem 4KSDI-MINI/コンパクト4Kカメラモジュール(グローバルシャッター)
- Victorem 4KSDI-MINI RS/コンパクト4Kカメラモジュール(ローリングシャッター)