インターネット回線を使用したIP映像伝送を実現するEvertzのXPS

公開日:2021/07/08最終更新日:2022/04/26

XPS-EDGE_IP映像伝送

IP映像伝送によるリモートプロダクション

昨今、放送業界ではリモートプロダクションと呼ばれる、いわゆる現場での人数を最少にして今までと同じようなコンテンツ制作をする用途が急増しています。また、放送業界に限らず手軽で高品質なIP映像伝送の需要は年々増加し、特にこのコロナ禍で大幅に増加しました。
今回紹介するXPSという製品はリアルタイムストリーミングプラットフォームという名の通り、高品質・低遅延を両立したH.264 / HEVCエンコーダー・デコーダーです。

 

XPSの概要

Evertz_XPS_products2021

XPS-EDGEという筐体に4つのHD-BNCポートを搭載しており、

  • 1~4エンコード
  • 1~4デコード
  • 1エンコード+1デコード、2エンコード+2デコード

という構成で使用することができます。

ですので、例えば2エンコード+2デコードのモデルを2台使用すれば、2拠点間で双方向のIP映像伝送をすることが可能です。
また、音声はエンベデッドオーディオ(SDI信号に重畳したオーディオ)をAAC-LCで8チャンネル伝送することができます。

ここまでは正直そんなに目新しくないかもしれません。
ここからがXPSの大きな特徴になります。

 

XPSは通常のインターネット回線、つまり管理されていないネットワークに強い

通常のエンコーダー・デコーダーは基本的に伝送しているパケットが欠落した場合、補完しないため、デコードした際にブロックノイズや最悪の場合フリーズが発生します。放送業界ではこれは致命的です。
ネット上で放送事故と呼ばれる動画があったりしますが、本来の放送事故は映像が何も映らなくなることであり、これが発生すると大事故ということになります。ですので、放送局は通常使用している他にも冗長系(バックアップの系統)を用意したりして、万が一メインの系統で問題が発生した際でも冗長系に切り替わり問題なく放送できるように準備しています。

少し話がそれました。
インターネット回線には帯域保証と呼ばれるネットワークの帯域を保証している回線があります。それを使用すれば基本的に帯域を気にする必要はありませんが、いかんせんコストは高めです。ですので、イベント等で使用するのみという場合は使用しやすいですが、常日頃から映像を送りたいという場合にはコストがかさんでしまいます。
そこで、インフラコストの高い通常のフレッツ等のアンマネージドネットワーク(通常のインターネット回線のことで、管理されていないネットワーク)が注目されるわけですが、帯域の変動やジッターという時間軸方向での信号のゆらぎというものが多く激しく発生します。

そこでそれに対し、耐性を持たせたプロトコル(通信のルール)が開発されています。
最近ですと、SRT(Secure Reliable Transport)というプロトコルが注目されてきています。
これは暗号化による安全性とパケットロス(パケットの欠落)を防ぐ確実性を兼ね備えた伝送方法です。
また、SRTは、DHCPによる設定が可能であり、通常のインターネット回線を使用した場合のIP映像伝送でのややこしさがないことも特徴の1つです。

SRTプロトコル

また、この他に世界的に注目されているZixiというプロトコルにも対応しています。
ZixiもSRTと同じようにアンマネージドネットワークに耐性を持たせたプロトコルでAWS(Amazon Web Service)などでも使用されているプロトコルです。
クラウドに一度送ることで、その先は複数拠点に映像を配ることが可能となります。

SRT_プロトコル2

 

今後、RIST(Reliable Internet Stream Transport)というプロトコルも実装予定です。
RISTはevertzの他の機器で既に一部使用されています。

この3種類のうち、どれか1つだけ対応している製品は数多くありますが、3つに対応している製品はevertzだけです。

XPSは16チャンネルの非圧縮オーディオを伝送できる

先程、オーディオを8チャンネル AAC-LCで圧縮し伝送できると書きましたが、実は非圧縮のオーディオですと16チャンネル伝送することができます。
1本のSDIにつき16チャンネルのオーディオをエンベデッドできますので、2エンコードのモデルだと32チャンネル、4エンコードのモデルだと64チャンネルを先程のSRTなどのプロトコルで耐性を高めて送ることが可能です。
ですので、オーディオのみ送りたい場合は映像の帯域(ビットレート)を最低まで落とすことで、より無駄がなくオーディオを伝送することができます。
これは今までないことなので、注目される方も多いのではないでしょうか。

 

XPSの豊富なバリエーション

XPSはシリーズとして展開されます。
今回紹介した製品はXPS-EDGEと呼ばれるスタンドアローンモデルです。
この他に、基板タイプで3RUのフレームに最大14枚実装することができる5782XPS、SCORPIONに実装することができるMIO-XPSというモジュールがラインナップされます。

XPS-EDGE_バリエーションevertzのウェビナーではXPSを会場・コメンテーター・オペレーター・放送局に設置し、それらの集まった映像をクラウドプロダクションスイッチャー:BRAVO-Studio上でオペレーターがコントロールするという紹介をしていました。
evertzはこのようなIP映像伝送を使用した次世代のリモートプロダクション(遠隔操作により、現場の人数を最小限でする映像制作)を強力に進めています。

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