Volucam -ボリュメトリックビデオキャプチャカメラの特徴-
公開日:2020/06/17最終更新日:2024/03/25
2019年11月のIBC2019において、IO Industriesはボリュメトリックビデオキャプチャカメラ「Volucam」を発表しました。発表後半年を経て、商品化され、テクノハウスにもデモ機が回ってきましたのでご紹介します。
Volucamを発表したIO Industriesのカメラの特徴
IO Industriesはもともと産業用カメラの生産・開発を行うメーカーでした。産業用カメラの用途としては生産管理のための検品センサーや研究開発、ハイスピード収録、モーションキャプチャー等があげられます。その為、映画産業、放送業界とは違い、ワークステーションの解析ソフトウェアと親和性の高い接続方法や、放送基準に沿わない自由な解像度、フレームレートが求められてきました。
受光センサーは社外のセンサーメーカーのものが採用されてきましたが、センサーの品質向上、開発したソフトウェアの汎用性、また、放送・映画業界の、ファイルベース化を始めとしたワークフローの柔軟化や、高品質小型カメラのニーズなどから、2014年のIBCで初めての放送・映画産業用カメラ「FLARE 4KSDI」を発表します。
ボリュメトリックビデオキャプチャとは
このIO Industriesの小型カメラは、PLマウントを始めとした高画質シネマレンズを使用できる小型映画・放送用カメラとして、アクションカメラからの置き換えや360°VR撮影の構築に採用されましたが、2017年、マイクロソフトより大量受注を受けることに成功しました。マイクロソフトは自らが開発推進するMR技術「Windows Mixed Reality」の為のボリュメトリックビデオキャプチャカメラに、IO Industriesを採用したのです。
この技術を採用した収録スタジオはアメリカ:サンフランシスコ、ロサンゼルス、イギリス:ロンドン、そして去年アジア初の拠点として韓国:ソウルにオープンしました。
そのすべてのスタジオで1箇所100台以上のIO Industriesカメラが導入されています。
ボリュメトリックビデオキャプチャは、4Kを超える高解像度カメラを3次元空間座標上に複数配置し、撮影対象の位置情報と表面のテクスチャーマッピングを同時に収録します。高解像度であると同時に、広い撮影領域と高速フレームレートを複数のカメラ間で厳密に同期する必要があり、放送規格以上に柔軟性のある収録方法が望まれます。その為、SDIではなく工業規格の伝送方式「CoaXPress」を使用し、専用の収録機「DVR EXPRESS CORE 2 MAX」との組み合わせで収録を実現、Windows Mixed Realityのレンダーファームへファイルベースで伝送される方法がとられました。しかし、課題として、複雑な配線とシステム全体の大型化、多数の大量なデータを伝送する為の高速ネットワークの対応が挙げられました。
Volucam
これらの解決策として、IO Industriesは収録メディア一体型のカメラ「Volucam」を発表しました。一般的にカメラには収録機能を備えているのが普通で、あえて「収録メディア一体型」と表することに疑問を持たれるかもしれません。Volucamでの収録メディアの扱いは、ベースバンドでは扱えない高速フレームレートや高解像度、柔軟なアスペクトレシオに対応するためのバッファーとしてのイメージです。撮影されたデータを一旦収録メディアにたくわえ、ネットワークを介して連番ファイルのDNGとして伝送されます。ちょうど、ハイスピードカメラがスローモーション映像をベースバンドで吐き出す前に、内蔵収録メディアでハイスピード収録するのと似ています。(事実、Volucamはハイスピードカメラほどゆっくりには出来ませんが、スローモーションカメラとしても使用可能です)
広い撮影領域と高速フレームレートを複数のカメラ間で厳密に同期するには、放送基準にある”リファレンスシンク”では不十分です。また、大量のRAWデータを伝送するため、ネットワークも高速である必要があります。10GネットワークのSFP+を採用することでPTPによる同期、ファイルへのタイムスタンプ、DNG連番ファイルの高速転送を実現しています。
PTPグランドマスターを使用できない場合でも、TTLを他のVolucamに供給することで同様に同期をとることが可能です。
10Gネットワークの他、カラーコントロール、フォーカシングのための12G-SDI出力も備わっており、リアルタイムモニタリングも提供します。
このように、独自な機能を網羅し、柔軟なファイルベース収録ワークフローを実現するVolucamにご注目ください。
デモ機もございますので、WEBお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせいただければと思います。